彼女だけが居ない部屋
男は、女を理由に人生決めちゃいけないと思うんだよね。それは女にも失礼なんじゃないかな。
タケシは自分が大好きなドラマの名ゼリフを裏切り、転居を決断しました。
冬には更新になる、ヤクザの事務所でも入ってそうな、夏は暑くて冬は寒くて、水回りが最悪な築40年超えの住まいを捨てて、次は必ず追い焚き機能付きのお風呂の有る部屋だけを条件に、緩く部屋探しをしていましたが、そこに、少しでもK子の側に居られるように、何かあった時にすぐに助けられるようにという条件を加えた結果、次の住まいは渋谷区か港区と決めていた自分を裏切り、全く興味の無い墨田区に、物件そのものは申し分無かったけど、何の魅力も感じた事の無い墨田区に、有り金を全部突っ込んで部屋を借りました。
そんなタケシの分かりやすいアピールは流石にK子の心にも届いてと言いたい所でしたが、正直そんな事くらいでは、すぐに彼女の心の根っこの部分を動かす事は出来なかったけれど、落ち着いて話をする時間を増やした事で、2人の気持ち(タケシだけかも…)は加速し、結果終わりを早めたのかなと、今は思います。
関係が始まった当初から、K子が楽しみにしていた、子供たちの野球合宿が迫って来た頃、まだ引越の前でしたが、その日の為に最低限のものを部屋に運ぶタケシ、合宿の準備をしながら、直前に熱を出した娘を必死に看病するK子。
無事に回復した子供たちとクソ旦那を合宿に送り出し、満を持して、朝まで一緒に居られる最初で最後の日を迎えました。
仕事が終わり、一度解散し、下の毛を整え、寝巻きに着替えて、万が一に備え、普段使っていない折畳み自転車でタケシの部屋にやって来たK子。
コンビニで食料を買い込み、Netflixでウシジマくんを観ながら、アホみたいにイチャイチャしていました。
途中、合宿先のクソ旦那からK子に電話がかかって来ました。
「出ないと怪しまれるから」
と電話を取ったK子はクソ旦那と中身の無さそうな会話、と言うよりは誰かの悪口を話した後に、
「愛してると言え」
とクソ旦那に言われ、
「嫌だよ〜」
と言いながらも満更でも無い様子で、
「愛してる❤おやすみ😘」
と、不倫相手の部屋で、全裸でクソ旦那にそんな事を言っているK子に、タケシは正直ドン引きしていました。
電話を切ったK子は、そんなタケシを観て、
「言わないと一生電話切ってくれないから、、ねぇ?怒ってる?」
とタケシにすり寄って来ました。
そこで抗えないのがタケシの弱い所、とにかくこの日は馬鹿になるくらいお互いの欲求不満を解消させようと決めていた馬鹿な2人は、刹那的な幸福感を得て、朝を迎えたのでした。
その後、タケシは本格的な引越を終え、K子と2人で座ってタバコを吸えるようにと、バルコニーにベンチを作ったり、K子は家族の目を盗んで、タケシに晩御飯のおかずを作って、仕事終わりの帰宅途中に渡したりと、大前提にある制限は変わらないなりに、束の間、甘ったるい日々を過ごしたのでした。
(1週間程度でしたが…)
この頃から、ようやくK子のヒステリーは落ち着き、色々と話も出来るようになって来てはいました。
K子「住宅ローンを払う事で、社会的信用を得られるんだから」(ドヤ)
タケシ「そ、そうか、家を買うって大変だなぁ」(そんな営業に引っかかるなんて、クソ旦那も揃って馬鹿なんだなぁ涙、そもそもその価値観受け入れたら、住宅ローンを払って露骨に食い物にされなければ社会的な信頼を得られない価値の無い人間と思われるのに…おまけに男女の年子が6畳の部屋にずっと居られるわけ無いし、土地に価値の無いマンションの買い替えなんて上手く行くはずもないのに、そんな事も考えずに35年ローン組むなんて…)
と、前途多難な部分もありましたが、
「そんなに子供が大切なら、真剣にクソ旦那と離婚する事考えないと、本当に子供が可哀想」
「K子が選ぶ男が俺じゃなかったとしても、K子自身と子供の幸せを考えるなら、クソ旦那とは絶対に別れるべき」
と、タケシの主張を伝える事も出来るようになって来たので、あとはすぐに薬を出さない、良いカウンセラーを探して、K子の心を少しずつでも改善して行こう!とタケシは無駄に意気込んでいました。
K子はただ、現実逃避の場所 or シンプルにSEXの相手を探していただけに過ぎなかった事に、タケシはまだ気づいていませんでした。
そしてまんまと共依存に落ちてしまったのでした。
次回へ続きます。