死ぬほど愛した人妻に死ぬほど憎まれる男のこれまでとこれからの話

クソ旦那の長年に渡る各種DVで心を壊された人妻を愛するも、クソ旦那にバレて強制終了。愛する女性を無くした悲しみから抜け出せず、現在訴状待ちのお人好し系男(独身)の話。

告白

タケシは酒の力を借りて女性を抱いた事はなく、その用心深さは石橋を叩いて壊すほどと自他共に認めていた。

「帰りましょう、自分もタクシー乗りますから」

自転車で走り出す彼女を見送り、タケシもタクシーで帰路に着いた、彼女にとってはあの場の勢いだったのかなぁとか考えているうちに眠りにつき、運転手さんの声で目を覚ましたらあっと言う間に自宅マンションに着いていました。

翌日、いつも通り出勤し、働いていました。

K子も斜め前の席で、何事も無かったかのように働いていました。

昼休み、K子からLINEが来ました。

「昨日の事覚えてる?私緊張して顔見れないよ」

確かそんな内容だったと思うが、そんな初恋を知った女の子みたいな台詞に、タケシは完全に撃ち抜かれました。

数日後、少し話そうかとなり、会社を少し離れた所から隅田川テラスに降りました。

2人壁に寄りかかって並び立ち、話をしました。

「あんな風にキスをしたくなってするキスは久しぶりだったなぁ」

「旦那さんとはしないの?」

「全然、そもそも旦那と上手く行ってないし」

ありきたりな台詞も気にならず、遠い目をする彼女に思わずキスをしました。

「私の事好き?」

「うん、好きだよ。そっちは?」

「私はまだ何も言えない。家庭もあるし…。もっと色々話さなきゃ」そう言いながら、晩御飯の支度をしなきゃとその場を後にしようとしたその去り際、

「LINEはこっちからする時以外しないで、バレたら大変だから」

そう言って彼女は自転車を漕ぎ出した。

その日から最後の前の夜まで、殆ど毎日彼女からLINEが来て、色々な事を告白され、色々な話をしました。

 

「私、コンプレックスの塊だから」

僅か3カ月の間に彼女から何度も聞いたこの言葉を初めて聞いた時、

「どうして?」と聞くと、

「私、初体験がレイプだったんだよね…当時は凄く悩んだけど、もう時効だから大丈夫だけど」と言われました。

高3の時に広島の専門学校を受験しに行った際、街で声を掛けられた男についてカラオケに行き、そこで事件に遭ったと聞かされました。

彼女の行動も正直軽率だとは思いましたが、よりによって最悪な目にあうなんて、そんな事をするクソ男はひと握りのはずなのに、まさに不運としか言いようがない。そう思い、タケシは黙って話を聞く事しか出来ませんでした。

「本当に怖くて、心を殺して、早く終われって思ってた…自分は男にとってただヤリたいだけの女なんだなって思って、その反動で学生の頃は遊びまくったんだ…」

この学生時代の話は最後まで彼女の口から語られる事はありませんでしたが、最後まで自分を悩ませた、彼女の自己肯定感の低さ、男性に対する歪んだ価値観や、死ぬほど辛い事を心を殺して耐えてしまうという自己防衛手段は、この時に意図せず身に付けてしまったものであろう事は容易に想像でき、この時は変に去勢を張る彼女をただただ抱きしめていました。

 

そしてこちらが息をつく間も無く、クソ旦那との壮絶エピソードが語られ始めました。

 

次回に続きます。